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【アスリートレポート】池田祐樹選手
モンゴリア・バイク・チャレンジ

レース モンゴリア・バイク・チャレンジ
開催日時 2015年8月23-29日 7日間(900km)
結果 総合4位
ステージ1(113km) : 5位 TSS:376
ステージ2(117km) : 6位 TSS:330
ステージ3(134km) : 5位 TSS:305
ステージ4(175km) : 5位 TSS:380
ステージ5(175km) : 8位 TSS:325
ステージ6(47kmTT) : 5位 TSS:170
ステージ7(86km) : 6位 TSS:243
7日間総合タイム 32時間42分11秒
場所 モンゴル
大会Webサイト http://www.mongoliabikechallenge.com/home/

ステージ1

世界一大きいチンギス・カーン像(45m!)から7日間のアドベンチャーが始まった。
程よい緊張と興奮。悪くない。



スタートから猛烈に速いレース展開。



数人のモンゴルライダー、イタリアのニコラス選手がアタックをかけまくる。私のペースはすでにレッドゾーンだが、負けるわけにはいかない。「最低でも表彰台」という意識で必死に付いて行った。
中盤まで3位争いの3人パックで激しいアップダウンが続くコースでバトルを展開。モンゴルの大草原はなだらかな坂をイメージしていたが全く違う。斜度が相当きつい。フロント34tでギリッギリで回している感じだ。
後半に差し掛かったところで足全体が攣り始め、悶絶・・・。今シーズン初めての足の痙攣。その後も全くパワーが出ず、前に進みたい気持ちとは真逆に失速するばかり。
最後は耐える走りとなり、初日は5位でフィニッシュ。


ステージ2

昨日の足が攣った状態で走り続けた影響か、思いの他足へのダメージが大きい。
少しウォームアップで足をほぐしてからスタートへと並んだ。
昨日と同じく、早々と先頭集団を形成するためのアタック展開。中盤まで食らいつくが、長い登りで置いて行かれてあとは一人旅。
悔しい。苦しい。けど、前へ進まなければいけない。



前を見て進んでいればチャンスは必ず来る。気持ちが折れたらそのチャンスも無くなる。
2日目は順位を一つ落として6位。GCは5位をキープ。



ステージ3

今日は、登りが多いステージ。なんとか上位に食い込みたいところだ。
とにかく一日一日、自分の力を出し切りたい。


序盤からかなり厳しいレース展開が続いたが、絞られた7人パックに残り最後の長い登りに差し掛かる。
遅れ始めたが、心が折れないよう前を向き、マイペースで登り続けた。
そこで、2人のモンゴル選手がパンク。コース上には気の抜けないハイスピードのロックセクションが急にあらわれたりするので注意が必要だ。
3日目、5位でフィニッシュ。GCは6位。
身体はもちろんだが、機材も疲労してきている。
明日は175キロ。できるだけ回復しなければ。



ステージ4

175キロステージ。MTBではかなりのロングコースだ。スタートは昨日登ったコースを逆走で下る。素晴らしいモンゴルの広大な大自然が眼下に広がる。
しばらく平坦が続くので、序盤はいつもよりも大きな集団でレースが進んだ。


エイドステーションの補給物。普段飲まないコーラもこの時ばかりはゴクゴク飲む。というかそれしかないので?!
登りの度にニコラス選手が強烈なアタックを仕掛ける。これにより徐々に先頭集団の人数が絞られていく。
必死にしがみつく。
千切れかけては下りで攻めて追いつき、を繰り返す。厳しい展開だがなんとか先頭集団に留まる。




ステージ4の勝負の明暗を分けた2つ目の山岳ポイント。
登るにつれて1-3-2にばらける。私は後方2人組。


頂上に近づくにつれて斜度もきつくなり、路面も砂が浮いてくる。周りの選手は降りて押している。これをチャンスと捉え、歯を食いしばって乗車して前との差を必死に詰めた。
5位には浮上したが、悔しくも前のパックには乗れなかった。最後まで追いつく努力はしたが、そのまま5位でのフィニッシュとなった。GCは6位。
途中からバイクの調子もおかしくなり、フィニッシュ後はメカニックに預ける結果となった。身体も機材も限界を攻めている。


ステージ5

バイクの故障は結局直せず。乗車はできるのでそのまま続行。今日も170キロ越えのロングステージ。
疲労してくると集団走行での動きがぎこちない。中にいても疲労が抜けない。集団での経験が少ないせいだろうか。。。


自分のリズムでペースコントロールできない集団の変速的な動きに足が削られる感じだ。
緩い長い登りで徐々に先頭集団の背中が離れはじめる。まだレース序盤なのにここで離れるわけにはいかない!!!涎も垂らしながら追い込むが付いて行けない。


置いて行かれた2人でローテーションを組みながら再び追いつくチャンスを狙う。
エイドステーションではサヤコがサポート。元気をもらうが、戦況はかなり厳しい。


順位を上げたり、変動はあったりしたものの後半の80キロは一人旅。
モンゴルの地平線が続く大地で、自分との葛藤が続く。
何やっている?俺ってこんなもんか?勝つんじゃなかったのか?本気でやっているか?
モンゴルで待っていた予想を超えたレベルの高いフィールド。
低いレベルで楽に勝ちたかった?
いや、そうじゃない!
チャレンジしたい。
今の自分を超えてこそ、手に入る勝利。
だったらどんな状況でも自分に負けている場合じゃないだろ?
様々な思いが駆け巡る。
やれることはやってきた。
あとは目の前の状況にベストを尽くすだけ。
とてもシンプル。
順位は8位だったが、どこかで吹っ切れた気がした。明日はやってやる。
GCは波が多いモンゴル選手達の順位が入れ替わり、まさかの4位に浮上。


ステージ6

気合いは十分。
しかし、2日前くらいから崩しかけていた体調が爆発しかけていた。最初3日間テントが一緒だった2人が結構ひどい風邪を引いていてテントの中でもすごい咳をしていた。結局彼らは体調不良で途中棄権した。そこでうつされていた可能性がかなり高い。極限まで追い込んでいるアスリートは免疫機能が低下している。喉は唾をのみこむだけで痛い。頭も重いのでひょっとしたら熱もあるかもしれない。
状況を考えると悲観的になりそうだが、不思議と心にネガティブな気持ちはあまりなかった。
今日は1分毎に一人ずつ出走するタイムトライアル形式スタート。私の好きなスタイルでもある。


昨日のレース中に嫌というほど自分自身と対話したのが良かったのだろう。
答えは一つ。
今の目の前のことにベストを尽くす。どんな状況であろうとも。
シンプルで当たり前のことだけれど色々な外的要素があるとこれが難しくなってくる。
スタートから全力走。
きついが、それは当たり前。それよりもフィーリングがとても良い。
前にスタートしたライダー達を次々と抜かしていく。
皆が降りている激坂セクションも乗車してクリアー。
悔しくも後ろからスタートしたニコラス選手とライアン選手には抜かれてしまったが、自分の走りはできた。
6日目にしてようやく納得のいく走りに近づくことができた。



ステージ7

最終日。いよいよ本格的に風邪の症状が出始め、節々も痛み、かなりきつい状況。86キロ追い込むことができるのか?不安が募る。
しかし、現状を考えると棄権はあり得ない。表彰台まであと一歩の4位。アジア人ではトップとなっている。
5位のマラル選手とは3分ちょっとの差。負けられない。
もう、やるしかない!
ペースが上がる度に集団の人数が減っていく。


乾燥した空気はのどの痛みを助長し、鼻水も止まらない。呼吸がきつい。
集団の後方で細い糸にしがみ付いているような感じだ。いつ千切れてもおかしくない。
正にサバイバルゲームだ。


GC5位のマラル選手を含む先頭集団から千切れてしまう。このままでは4位すら守れない。しかし、どうすることできない。
心が折れそうな時に、隣にいたGC3位のミゲール選手が「また追いつくチャンスはある。ユーキは5位のマラルとは何分差だ?3分ちょいか。頑張って前に追いつくぞ。」と励ましてくれた。

後ろ姿すら見えないが、必ず追いつくと信じてローテーションをしてペダルを踏み続けた。
そして、目を一瞬疑ったが、前のマラル選手ともう一人のモンゴル選手の後姿を捉えることができた。
こうなると不思議なもので再び足に力が湧いてくる。ミゲール選手のペースも自然とアップする。最後の20キロは死にもの狂いでゴールへと向かった。

フィニッシュまでに追いつけなかったものの、差は詰めることができた。
最終日は6位。GCは4位を死守。5位とは7日間でたった26秒差!表彰台へ上れなかったことは本当に悔しいが、最後まで良い戦いをできた。

フィニッシュした瞬間は久しぶりに涙が溢れた。



病を押し切って全ての力を出し切った7日間、達成感、ライバル達との激闘、7日間最高のサポートをしてくれた清子、応援してくれた皆、モンゴルの大自然の美しさ、など、フィニッシュゲートをくぐった瞬間にいろいろな思いが溢れてきた。

1位:初日から圧倒的な強さを見せたイタリアのニコラス選手、2位:アイルランドナショナルチャンプのライアン選手、3位:元プロロード選手のミゲール選手。
そして、モンゴルロードバイク界の若手ホープ、マラル選手(5位)とボロル選手。

皆、素晴らしく強かった!

彼らのおかげでまた一つ自分の限界を超え、成長できた。
ありがとう。

7日間で900キロという今まで体験したことのないMTBでの距離。テクニカルセクションが少なく、フィットネス重視のこのコースは自分にとって苦手意識はあった。

しかし、このチャレンジを終えたことで新たな自信へと繋げることができた。
まだまだやれる。成長できる!


沢山のサポート、応援ありがとうございました!
今回の7日間チャレンジの様子は、テレビで放映される予定となっております。日時などの詳細が決定したらまた告知いたします。
引き続きよろしくお願いいたします。

写真:池田清子

【レース機材】
バイク:Canyon LUX CF 29 チームエディション
ドライブトレイン:SRAM XX1(34t)
タイヤ:Continental Race King 2.2 Protection:18PSI
グリップ:Ergon GS1
グローブ:Ergon HX2
ペダル:Crank Brothers Eggbeater 11
サングラス:Limar
ヘルメット:Limar
ボトルケージ:Topeak Shuttle Cage CB
チェーンオイル:Finishline Ceramic Wet Lube
補給食:GU、パワーバージェル&VESPAプロ、Sayako's Kitchen
リカバリー:C3 fit コンプレッションソックス
テーピング:ニューハレ

【パーソナルスポンサー】
NEWHALE:テーピング
自転車コーキ屋
Peaks Coaching Group Japan
VESPA
パワーバー
THE NORTHFACE
C3 フィット
なでしこ健康生活・生きている玄米
ヒロコンフーズ
VITAMIX
HALO HEAD BAND:ヘッドバンド
オルタナティブバイシクルズ
民宿藤屋(王滝村)
百草丸日野製薬(株)
スポーツクラブルネサンス

【チームスポンサー】
Ergon
Topeak
Canyon
SRAM XX1
Continental Tires
Primal Wear
Finish Line
Crank Brothers
Chamois Butt'r
Stan's No Tubes

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