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【アスリートレポート】池田祐樹選手
テルユライド100

レース 第2回テルユライド100
開催日時 2015年7月25日 距離 100マイル(160キロ)
結果 総合優勝(大会2連覇) タイム 8時間3分3秒
獲得標高 約4600メートル レース中平均標高 2,935メートル(最高地点3,829メートル)
TSS 461.5 レース走行データ トレーニングピークス
最低気温 1℃ 最高気温 29℃
場所 コロラド州テルユライドUSA 大会ウェブサイト http://telluride100.com/

昨年の第一回大会を優勝。初代チャンピオンとして臨む今回の戦いは楽しみであり、良い意味で緊張感があった。

「もう一度勝ちたい」

その気持ちだけしかなかった。そのためにも早めにコロラド入りし、標高順応とトレーニングもしっかりと行った。不安要素だった肺炎の後遺症もなくなり、体調もうまく合わせられていた感じだ。

食事も健康とパフォーマンスの両方を増進させるSayako(アスリートフード研究家)の献立でコンディションもバッチリだ。前日の食事(Sayako公式ブログでも紹介)。レースに必要な要素が沢山詰まった最高の食事だった。

レース時間は8時間前後が予想されていたので最後までエネルギーを切らさない補給プランを夫婦で入念に相談して決定。

1番のプレートを付ける喜びとその大きな意味を心に刻んだ。


朝6時スタート。気温は一桁前半。先導車がいなくなり、登りが始まるとレースは一気にヒートアップ!
今回の優勝候補の一人、BryanDillon選手が飛び出ようとする。彼は過去の実績で言えば私より各上の選手。しかし、私も成長している。ここで前に出させるわけにはいかない。
最初の峠はブラックベアー峠(標高3,829メートル)。今レースの最高地点であり、最もチャレンジングな登りだ。全力でも約1時間半はかかる。しかも乗車不可能で押し担ぎのセクションもある。Dillon選手と抜きつ抜かれつのデッドヒートでひたすら登る。開始30分ほどですでに後続は遥か後ろ。
ここから二人の長い戦いが始まった。
一つ目の峠はDillon選手にわずかに先行を許すが、下りで追いつき、引き離し、私がリードする形で2つ目のOphir峠へ突入。


photo
zoom
©Bobby Duncan

ここでもお互い先頭を譲らずに、峠をほぼ同時に通過。

下り終えると一つ目の補給地点。Sayakoからボトルとエナジーバーをもらう。ここで約26マイル、3時間半が経過。

テクニカルな森のトレイルをギリギリのスピードで飛ばす。森の中は暗い上に、前日の雨で泥スポットが点在する。路面に対して極限まで集中した。ここはDillon選手もぴったりと後ろに付いてくる。

しかし、ここでまさかの二人でロスト。コースサインが森の暗くて見えにくい位置にあり、そのまま長い下りを下りきってしまったのだ。しばらく迷い、来た道を登り返し、ようやくロストした地点を発見した。GPSデータ上では約4.62キロ、18分3秒(レース後データ解析)をロス。痛恨のミスだ。コースへ戻るにも足を使い、何より精神的なダメージが大きかった。

ここはDillon選手に助けられた。彼はポジティブで足を緩めることなく、「前へ早く追いつこう」とペダルを回した。少しでもくじけそうになった自分が恥ずかしかった。すぐに二人でレースペースに戻し、追撃を開始した。

お互いに得意な場面で引き合ってペースを上げていく。非常にきついが、足を緩めることでこの良い流れを崩したくなかった。今回、サイクルコンピュータの表示は時間と距離のみ。パワー値や心拍数を見ると自分にリミットをかける恐れがあったので今回はその時々のフィーリングを優先してペーシングをした。

良い展開を作り始めた矢先に再びコースマークに混乱。ループ1とループ2のサインが入り乱れているところがあり、サインと誘導に従ったにもかかわらずいつの間にかスタート/フィニッシュエリアを通過せずにループ2に突入してしまっていた。ミスしたのはほんの数キロだが、補給ポイントを逃したのは大きな打撃だった(レース後に事情が考慮され、棄権にはならずに10分のペナルティが加算された)。

日照りが強くなり、一気に気温が上昇。ボトルを受け取れなかったので、このまま水が少なくなるのが非常に気がかりだが二人のデッドヒートは止まらない。ロストしている間に先行したライダーに追いついて抜いて行き再び先頭へ。

今年から追加されたシングルトラックセクションがこれまた素晴らしい。乗っているだけで疲労が和ぎ、自然と笑みがこぼれるくらいに楽しませてくれる。

最後の難関の峠「LastDollar」へと差し掛かる。約18キロ。峠の入り口で最後の補給をしっかりと受け取る。サポーターと次に会うのはフィニッシュ地点。この登りで勝負は決まるという予感がした。

ここまでで約6時間。全力で走ってきている。足はガクガク、多少の目まいすらする。ここにきても、お互いに一歩も譲らない。

強い向かい風でもお互いに後ろには付かずに常に横に並んでレースを進めている。

戦略的には後ろに付いてエナジーをセーブするのがスマートだろう。

しかし、ここはお互いのプライドと意地のぶつかり合い。我慢比べ。

どちらかのラインの路面が悪くても横並びは崩さない。

この時、この瞬間、二人言葉は交わさなくとも心で理解し合い、シンプルにお互いの全力をフェアにぶつけ合っていた。

片方がダンシングすれば、片方もすぐさまギアを上げて立ち上がる。いちホイール分さえも相手を前に出さない。

今まで体験したことの無い辛さだったが、アスリートだけが味わえるこの日常からかけ離れた極限の世界が心地よいのも事実。生きている実感。一瞬の呼吸の乱れさえ影響する濃密な時間。

そんな時間を共に作り、共有し、アスリートとして高めあってくれている最強のライバルDillon選手。心からリスペクトし、感謝だ。

一体いつ頂上につくのだろうか。。。永遠にすら感じる。

自分が限界を感じていたポイントから数回はさらに「限界」を越えている。

足を緩めたい誘惑が頭を横切る。必死にネガティブな自分と葛藤する。

負けるのか。。。

際の際で負けそうな気持ちが出始めたときに、峠の入り口から続いていた沈黙をDillon選手が破った。

「Go Yuki….」

その言葉と同時に彼の姿がすっと後方に消えた。

頂上はそこからほんの数百メートルだった。

お互い本当にギリッギリのところで戦っていた。

一歩間違えば、少しでもネガティブな心に負けていたら、私が彼の立場となっていただろう。

しかし、ここでレースは終わりではない。残り約5マイル。長い下り、3キロほどの登り、そしてフィニッシュへと続くストレート。

フィニッシュゲートをくぐるまで一瞬たりとも気を緩めることはできなかった。離れていても後ろから強烈なプレッシャーを感じさせるほど彼は非常に強い選手だった。


勝利を確信した瞬間、思わず共に戦った愛車を掲げてゲートを歩いて通過した。

文字通り「出し切った」レース。優勝した心からの喜びを隠し切れなかった。ものすごい達成感だ!


Dillon選手の帰りを待ち讃え合う。
彼のおかげでまた次のステップへ自分を引き上げることができた。ありがとう!

大会スタッフの方々と。暖かい雰囲気、素晴らしいレースを作っている彼ら彼女たちは本当に美しい。
心から感謝。ありがとう!


表彰式。テルユライドは炭鉱の古い歴史があり、トロフィーの代わりになんとツルハシが渡される。やはり頂上は最高の気分だ!


レース後、ライバル達と語らう。これも最高に大切な時間。


今回の優勝のために一番近くで一緒に準備し、レンタカーで補給地点を回り、献身的に戦ってくれたSayakoにはスペシャルサンクス。We did it !
沢山の応援、サポート本当にありがとうございました!

写真:Sayako Ikeda


【レース機材】
バイク: Canyon LUX CF 29 チームエディション
ドライブトレイン:SRAM XX1(30t)
タイヤ: Continental Race King 2.2 Protection:18PSI
グリップ: Ergon GS1
グローブ: Ergon HX2
ペダル: Crank Brothers Eggbeater 11
サングラス: Limar
ヘルメット: Limar
ボトルケージ: Topeak Shuttle Cage CB
チェーンオイル:Finishline Ceramic Wet Lube
補給食:GU、パワーバージェル&VESPA プロ、Sayako's Kitchen
リカバリー:C3fit コンプレッションソックス
テーピング:ニューハレ

【パーソナルスポンサー】
NEW HALE:テーピング
自転車コーキ屋
Peaks Coaching Group Japan
VESPA
パワーバー
THE NORTH FACE
C3 フィット
なでしこ健康生活・生きている玄米
ヒロコンフーズ
VITAMIX
HALO HEADBAND:ヘッドバンド
オルタナティブバイシクルズ
民宿 藤屋(王滝村)
百草丸 日野製薬(株)
スポーツクラブ ルネサンス

【チームスポンサー】
Ergon
Topeak
Canyon
SRAM XX1
Continental Tires
Primal Wear
Fini sh Line
Crank Brothers
Chamois Butt'r
Stan's No Tubes

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