NEWS&REPORT ニュース&レポート

スポーツ栄養基礎知識



炭水化物 — 食物に含まれる炭水化物

炭水化物とは、一言で言えば糖類のことです。けれどもすべてが同じというわけではありません。炭水化物はさまざまな糖成分から成り立っており、構成単位(単糖)の数やタイプによって以下のように区別することができます。

単糖類(モノース)
1個の単糖から成る
グルコース(ブドウ糖)
フルクトース(果糖)
ガラクトース
はちみつ
果物
牛乳
二糖類(ディオース)
2個の単糖から成る
サッカロース(ショ糖)
マルトース(麦芽糖)
ラクトース(乳糖)
砂糖
モルトビール
牛乳
オリゴ糖類
10個以下の単糖から成る
マルトトリオース等
デキストリン
(グルコース鎖の結合体)
トースト、ビスケット、クラッカー、栄養調整食品など
多糖類(複合糖)
10〜数十万個の単糖から成る
植物性:でんぷん
動物性:グリコーゲン
(グルコース鎖の結合体)
シリアル、パン、麺類、米、イモ類など

激しい運動時ほど炭水化物が多く必要です!

炭水化物は腸内で単糖類に分解され、血液の中に取り込まれます。血液中のブドウ糖(グルコース)濃度(血糖値)が上昇すると、それに誘引されてインシュリンが分泌されます。インシュリンに、血液中のブドウ糖を筋肉や脂肪組織へと運び、血液中のブドウ糖濃度は下がります。

大量のブドウ糖 → 大量のインシュリン放出 → 糖質の急速な欠乏

一方、果糖(フルクトース)にはインシュリンの放出を誘引する作用はありません。そのためブドウ糖よりもゆっくりと血液に吸収されます。果糖とブドウ糖を一緒にとるとインシュリン反応が緩和されるので血糖値の急激な低下を防ぐことができます。

運動前にブドウ糖を大量に摂取することはお勧めできません。

炭水化物が血液中に取り込まれる速さは?

炭水化物が腸を経由して血液に運ばれる速さについて考えてみましょう。炭水化物それ自体の分解速度は速く、糖鎖の長さといったものはさほど速度に影響を与えません。むしろ食物に一緒に含まれている成分(食物繊維、脂肪、たんぱく質など)が、炭水化物の吸収速度を大きく左右します。これらの成分によって胃の中での食物の滞留時間が変化し、炭水化物が血液に取り込まれる速さも変わってくるのです。


食物繊維について

食物繊維は胃が空腹になるまでの時間を遅らせて、炭水化物を血液に取り込む速度を和らげる効果があります。そのため血糖値およびインシュリン濃度の急激な上昇を抑制することができます。結果として、より長時間にわたるエネルギー供給が可能になります。

食物繊維は消化速度を和らげるノンカロリーな食品成分。
穀類やイモ類、フルーツ、野菜などに豊富に含まれています!

<大事なポイント>
繊維が豊富な食品の消化には、たくさんの水分が必要です。

血液中のブドウ糖濃度(血糖値)

グラフ:血液中のブドウ糖濃度(血糖値)

食物繊維は水溶性と不溶性に大別されます。りんごやオーツ麦などに含まれる水溶性の食物繊維は、水の分子と結合する性質があり、消化が比較的容易です。水分を取り込んだ食物繊維はゼラチン状になり、食物の成分を包み込みます。

食物繊維は消化を促進し、腸内細菌の働きを助け、私たちの健康に幅広くプラスの効果をもたらしてくれます。カラダを健康に保つためには、毎日約30gの食物繊維を摂ることが理想。パワーバーがオーツ麦を主原料としているのも、実はこうした理由からなのです。



どのような炭水化物を摂るのが望ましいか?

シリアルやパン、麺類、玄米、イモ類、そして パワーバーのように、でんぷん質が豊富な多糖類(複合糖質)を多く含む食品を選ぶと良いでしょう。単糖類やお菓子やデザートに含まれるショ糖は控えて、代わりに果物(果糖)をたくさん摂りましょう。

だからといって甘いものを禁止する必要はありません。
大切なのはバランスです!

炭水化物の摂取が足りないと…

図:炭水化物の摂取が足りないと…

炭水化物が豊富な食品を摂取して体内にグリコーゲンが十分に貯蔵されている状態であれば、長時間にわたる運動が可能です。しかしグリコーゲンがなくなると、集中力が低下し、吐き気や目まいを覚え、運動を続けることが困難になります。こうしたエネルギー欠乏の兆候は、おそらくほとんどの人が経験したことがあるのではないでしょうか。これは血糖値が極端に低下し、脳に十分な糖質を供給できなくなったことが原因です。炭水化物の急激な欠乏は、私たちにダメージを与えます。長時間にわたって運動を続けてもこうした状態に陥ることがないようにするためには、炭水化物を規則正しく摂取することが大切なのです。


食事の内容別にみた筋グリコーゲン貯蔵量
および有酸素運動の最大持続時間(自転車エルゴメータによる)

グラフ:食事の内容別にみた筋グリコーゲン貯蔵量および有酸素運動の最大持続時間(自転車エルゴメータによる)



グリコーゲンの貯蔵は鍛えることが可能

ゆっくりと時間をかけ、軽いレベルの持久型トレーニングを行うことによって、グリコーゲンの貯蔵量は増加させることができます。そして炭水化物を十分に含んだ低脂肪食品を摂取すれば、さらに多くのグリコーゲンを蓄えることができ、トレーニングや競技の際により強力なパフォーマンスを長時間にわたって発揮することが可能になります。

炭水化物の補給

激しいトレーニングや競技を長時間行うと、筋肉に貯蔵されていたグリコーゲンが枯渇してしまうので、新たに炭水化物を供給する必要が生じます。炭水化物が特に効果的に体内に取り入れられるのは、運動が終わってから2時間の間です。したがって、炭水化物はできるだけ早いタイミングで補給することが大切です。

グリコーゲン貯蔵量を適正値に戻すためには、炭水化物が豊富な食事でも12時間から24時間かかります。
しかし、たんぱく質や脂肪中心の食事の場合には、なんと3日間もかかってしまうのです。



グリコーゲンの補給に最適の食品は?

  • バナナなどの果物
  • エナジーバー(参考:パワーバーには単糖類と複合糖類がバランスよく含まれています)
  • フルーツジュースなど炭水化物が豊富な飲料
  • 麺類、米、イモ類など

「カーボ・ローディング」とは—— 競技に備えて行う特別な栄養摂取法

「カーボ・ローディング」(またはグリコーゲン・ローディング)とは、競技などに備えてグリコーゲンを蓄えるために行う栄養摂取法で、高強度のトレーニングと並行して行います。その一つの方法は、グリコーゲンを一旦枯渇させ(競技の1週間ほど前に実行)、その上で炭水化物を中心にした食事を摂ることで、通常以上のグリコーゲン貯蔵を可能にするというものです。

1日目 2時間の激しい運動と炭水化物50%の食事
2〜3日目 40〜60分のやや軽いトレーニングと炭水化物が最低50%以上の食事
4〜5日目 およそ20分のごく軽いトレーニングと炭水化物70%の食事
6日目 トレーニングなし、炭水化物70%の食事
7日目 競技当日=炭水化物が豊富な軽い朝食
この方法は、競技時間が90分以上の耐久競技にのみ適用してください。
グリコーゲンを貯蔵する際カリウムとともに貯蔵されるので、筋肉中には水分が蓄えられます。そのため体重が2kgまで増加します。

カーボ・ローディングの手軽な方法として「パスタ・パーティー」などが知られています。
あなたもパワーバーで、最高のスポーツを楽しみましょう。

カーボ・ローディングのもう1つの方法として、「サルティン法」と呼ばれる栄養摂取法があります。これは炭水化物を枯渇させた後、炭水化物重視の食事に先行してたんぱく質と脂肪を中心とした食事を2〜3日間摂取するという方法です。しかしながら、特にトレーニングを継続している場合には、この期間中に肉体的および精神的にバランスを崩す可能性があります。こうした理由から、「サルティン法」は、実践するにはリスクの高い方法と言えるでしょう。

スポーツ栄養基礎知識のトップへ



▲このページのTOPへ